避難所での生活
避難所での生活はプライバシーも保たれず、不自由なことが多くなります。集団生活の中で、いかにストレスを溜め込まないかが、大きな課題となります。
避難所の役割
地震によって、自宅が倒壊、もしくは倒壊の危険がある場合や火災で焼失した場合、避難所などで生活することになりますが、その際、まずは自治体が指定した避難所を利用しましょう。そこを利用すれば、被災者は救援物資の配給や自分の家、家族、居住区などの安否情報を得やすく、自治体でも被災状況を掌握できるからです。医師や看護師も巡回してくれるので、治療や投薬をしてもらうことが可能です。
大災害に備えて自治体は食糧などを備蓄しているものの、これはそれぞれの避難所に備えている分けではありません。そのため物資は倉庫などから避難所に運ぶことになるのだが、道路や鉄道が破壊されていたり、救助活動などで交通渋滞が発生すると、全避難所に救援物資を運ぶことは難しくなります。やはり、各自である程度の必需品は準備しておく必要があります。
プライバシーの問題
学校の体育館や公民館など公共の施設が、避難所として多く使用されます。被災者にち密な救援や保護を行う機能を維持する必要から、避難所は数が限られています。避難所となった体育館には、毛布などが足の踏み場もないほどに敷き詰められ、間仕切りのないところで、赤の他人同士が避難生活を送らなければなりません。もちろん、プライバシーは全く保てません。お互いに被災者という状況なので、一時的な期間であれば、仲間意識のようなものが芽生え、互いに尊重しあったりもするが、避難所生活が長引くと、そういうわけにもいかなくなります。
いかに体育館が広くても、高い人口密度なので夏は暑く、冬は足元から冷えて生活環境は非常に厳しい状況です。おまけに防災の防犯ため、電気をつけっ放しにするのでなかなか眠れないという人もいます。実際、多くの体験者が子供の泣き声や寝息、夜遅くまで行われる救助活動の騒音のため熟睡できなかったと語っています。
被災者の中には、こうした避難所生活に耐えることができず、危険を承知で倒壊しかけている自宅に帰る人や、乗用車の中で寝泊まりをしたために、エコノミークラス症候群になったという例もありました。このようなことにならないためにも、プライバシーを確保するために、隣との間にダンボールを立てて壁を作るといった工夫も必要です。しかし集団生活には大きなメリットもあります。避難所には、申請関係の手続き情報や復旧情報、業者の相場など、ナマの情報が集まってきます。デマに惑わされないよう注意しながら、これらを活用しましょう。
被災者同士で助け合い、困難を乗り越える
避難所での生活が長引くと、風呂や共同トイレの衛生管理、また配給の公平さに関して様々なトラブルが起こります。共同生活なので、避難所生活者全体が一致団結しなければ、それら多くの問題は解決することができません。まず、自治会組織を結成して、避難所が団結することです。例えば自治体との話し合いを行う際でも、団体の方が個人よりも、押しもきくし、いろいろと便利です。また、避難所にいる被災者の数、男女比率、年齢が把握できれば、正確に食糧の量や数も出せるので配給量の揉め事が減り、どんな物資がどれだけ必要なのかも把握しやすくなります。
また速やかに救護班を組織したいところです。健康に不安を抱えている人の介護は当然として、医薬品の調達、医療機関への移送も円滑に行われるなど、心強いことが多くなります。阪神淡路大震災の際の避難所で、地域の活動が以前から盛んであった所の多くは、自治会の運営方法や規則、権限などを定めるなど、うまく被災者を取りまとめたといわれています。このような事例から、都市部でも近隣との互助精神を育成することが見直されています。
神戸の避難所における運営例
避難所生活の運営は、神戸の例を見ると大きく4期に分けることができます。この4期を通して大切なことは、被災者とボランティア、施設救援スタッフの3者が、お互いの立場を理解し、絶対に越権行為を犯さないということです。
第1期にあたる地震発生直後の混乱と避難所生活の初動期は、人が避難所に集まり始め、遅れてやって来た者は条件の悪い場所しか確保できませんでした。その不公平さからトラブルが発生した例も多くあった。自治組織が結成されても、援護者や救援物資が完全に不足している時期です。
そして第2期となる、被災後約1週間の期間にあたる避難所生活安定期では、ようやく避難者が冷静さを取り戻し始めると共に、飲食物以外の要求が出され始めました。
食べ物よりも切実なトイレの問題
トイレの問題は、ある意味で食料問題よりも深刻です。震災した神戸では上下水道が破壊され、水洗トイレの使用が不可能となりました。学校などの避難所ではくみ取りトイレを設置したり、穴を掘って、急造のトイレを作ったりしたが、大きな衛生上の問題を生んでしまいました。トイレは、自宅にとどまった人にとっても大きな問題となりました。貴重な水を使用したり、新聞紙やコミ袋を便器にはさんだりといった工夫が施されました。
紙は流さずに汚物入れに捨てることが、節水のコツです。くみ取りトイレで、くみ取り回数を減らすには、便器内の山を棒でならすようにすればいい。くみ取りトイレや和式トイレに慣れる機会を、子供には作っておきましょう。避難所における団体生活で、不衛生なトイレは伝染病を引き起こす原因にもなります。それを防ぐには、できるだけ早くトイレの清掃当番を決めることです。そういう意味でも、自治会を結成することは絶対に必要といえるでしょう。
またトイレの問題や救援物資の配給が不公平だという不満が、深刻になってきました。被災後1週間か.ら約1ケ月後までの生活機能模索期が、第3期となります。この時期には、安定して救援物資が提供される一方で、被災者の間で疲れが見え始めます。プライバシーの問題や単調な食事メニューなどのため、精神的な面でも問題が発生し、避難所生活に対する不満が増大しました。
第4期は、地震発生から1ケ月以上経過した生活機能複異期です。神戸では、仮設の風呂などもこの時点で用意され、被災者を喜ばせたものの、彼らの疲労はピークに達し、またボランティアの人数も減ってきます。一方で、ライフラインが復旧した地区の人々が、徐々に避難所を去っていきました。
被災後には、心のケアも重要になる
大災害などを経験した後、しばらくすると、突如、恐怖感に脅かされる感じがしたり、悪夢にうなされたりする症状が表れる場合があります。いわゆるPTSD(心的外傷後ストレス)です。このPTSDの症状が進行すると、無気力や無感動になり、場合によっては極度のノイローゼになることも考えられます。
このような患者には、報道映像などは見せず、なるべく災害時の話題をしないように注意しましょう。そして可能な限り、リラックスした気分で生活をさせるよう工夫することです。特に幼児の場合は、ケアに細心の注意を払わなければなりません。また、避難所生活が長引いてくると、ストレスが徐々にたまってきます。最善なのは生活の中で息抜きをして、ストレスを発散することです。ただ共同生活の中で、息抜きするのも容易なことではありません。神戸における避難所生活者に、「今、一番欲しいものは何ですか?」とアンケートしてみたところ、お酒が高ランクに入ったという。避難所でお酒というのは不謹慎に思えると考えてか、さほど声高に要求されなかったものの、ストレスを解消するのに役立ったようです。
ストレスの軽減には、コーヒーなどの噂好品も効果があった。気晴らしにトランプやウノといったゲームもいいので、非常持ち出し袋の中に入れておくといいでしょう。また、見逃してはならないのが、高齢者のストレスです。入り乱れる情報を整理できず、次第に不安を募らせ、一種のパニック状態になった末にストレスをため込むといった状況がよく見られました。もし傍に高齢者がいた場合は、なるべく話しかけ、安心させてあげるなどの気遣いを見せてあげましょう。
避難所生活のポイント
・物資配給や情報収集の面で、自治体指定の避難所はメリットがある。
・問題解決のためには、自治体の組織が不可欠。
・心のケアやストレスの軽減が大事